犬の下顎骨の腫瘍とは?|症状や治療、下顎骨切除術について獣医師が解説

テーブルのそばで口を開ける犬

「犬の下顎に硬いしこりがある」
「下顎骨に腫瘍があると言われた」
「顎の骨を切除しても、ごはんを食べられるの?」
愛犬の下顎に腫瘍が見つかった飼い主様は、このような不安を感じているかもしれません。
犬の下顎には、口腔内の組織から発生する腫瘍や、骨そのものから発生する腫瘍など、さまざまな腫瘍ができることがあります。
下顎骨にまで腫瘍が広がっている場合には、腫瘍だけを取り除くのではなく、下顎骨の一部を含めた外科手術が必要になることもあります。

今回は、犬の下顎骨に発生する腫瘍の種類や症状、検査、治療について解説します。
下顎骨切除術や手術後の生活についてもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

犬の下顎骨にはどのような腫瘍ができる?

犬の下顎には、良性から悪性までさまざまな腫瘍が発生します。
代表的な腫瘍には、以下のようなものがあります。

  • メラノーマ(悪性黒色腫)
  • 扁平上皮癌
  • 線維肉腫
  • 骨肉腫
  • 歯原性腫瘍

腫瘍によって悪性度や転移のしやすさ、周囲への広がり方は異なります。
また、口腔内に発生した腫瘍が大きくなり、下顎骨へ浸潤するケースもあります。
そのため、「下顎に腫瘍がある」という情報だけで治療方針が決まることはありません。
腫瘍の種類や広がりを詳しく調べてもらうことが重要です。

犬の下顎骨に腫瘍があるとどのような症状が出る?

犬の下顎骨に腫瘍ができても、初期には目立った症状がみられないことがあります。
腫瘍が大きくなると、次のような変化がみられる場合があります。

  • 口からの出血
  • 強い口臭
  • よだれの増加
  • 食欲の低下
  • 歯のぐらつき
  • 顔の左右差

「歯周病だと思っていたら腫瘍だった」というケースもあるため注意が必要です。
とくに、口腔内のできものが大きくなっている場合や、治療しても出血や腫れが改善しない場合には、早めに詳しい検査を受けることをおすすめします。

犬の下顎骨の腫瘍はどのように診断する?

犬の下顎骨に腫瘍が疑われる場合には、腫瘍の種類と広がりを確認する必要があります。

病理検査

病理検査とは腫瘍の一部を採取し、詳しく組織検査を行うことです。
腫瘍は見た目だけでは腫瘍の種類を正確に判断できません。
そのため病理検査は治療方針を決める上で重要な検査です。
ただし、腫瘍の位置や大きさによっては、全身麻酔下で組織を採取されることもあります。

画像検査

レントゲン検査では、下顎骨が腫瘍によって破壊されていないかなどを確認してもらいます。
さらに詳しい評価が必要な場合には、CT検査が行われることがあります。
CT検査は、腫瘍が下顎骨のどの範囲まで広がっているかを立体的に評価できるため、手術で切除する範囲を決めてもらう際にも重要です。

悪性腫瘍が疑われる場合には、胸部画像検査やリンパ節の検査などを行い、転移の有無も確認してもらいます。

口の中をチェックされる犬

犬の下顎骨の腫瘍はどのように治療する?

犬の下顎骨に発生した腫瘍では、腫瘍の種類や進行度に応じて治療方法が検討されます。
局所にとどまっており、外科的に切除できる腫瘍では、手術が重要な治療選択肢となります。

一方で、腫瘍の種類や転移の有無によっては、放射線治療や抗がん剤などが組み合わされることも。
治療方法は「下顎骨に腫瘍があるから手術」と一律に決められるわけではありません。
病理検査や画像検査の結果をもとに、それぞれの犬に適した治療を検討してもらうことが大切です。

犬の下顎骨腫瘍で行う下顎骨切除術とは?

下顎骨に腫瘍が浸潤している場合、腫瘍だけを取り除いても顎の骨に腫瘍細胞が残ってしまう可能性があります。
そのため、腫瘍の種類や広がりによっては、正常な組織を含めて下顎骨の一部を切除する「下顎骨切除術」が行われます。

切除する範囲は腫瘍の位置によって異なり

  • 下顎骨の先端部分を切除する方法
  • 下顎骨の片側の一部を切除する方法
  • 下顎骨の片側を広範囲に切除する方法

などがあります。

下顎骨を切除すると聞くと、飼い主様は「顔が大きく変わってしまうのでは」「食事ができなくなるのでは」と不安に感じるかもしれません。
しかし、犬は顎の一部を切除したあとも、状態が安定すれば自力で食事をとれるようになるケースが多くあります。

下顎骨を切除した犬は手術後もごはんを食べられる?

下顎骨切除術の直後は、痛みや腫れなどによって食事をとりにくくなることがあります。
そのため、手術後は十分な疼痛管理を行いながら、状態に合わせて栄養管理を行いましょう。

回復後の食事の食べやすさは、下顎骨を切除した位置や範囲によって異なります。
食べ方に変化がみられることはありますが、多くの犬は徐々に新しい顎の状態に適応していきます。

必要に応じて、フードをやわらかくしたり、食器の高さや形を工夫したりすることも大切です。
手術を検討するときには、腫瘍を切除できるかどうかだけではなく、手術後の食事や生活についても獣医師と相談しておきましょう。

犬の下顎骨の腫瘍は早めの検査が重要

犬の口腔内腫瘍は、進行すると下顎骨へ広がり、必要な切除範囲が大きくなることがあります。
一方で、腫瘍が小さく局所にとどまっている段階で発見できれば、より小さな範囲の切除で対応できる可能性があります。

犬の口のなかは普段じっくり見る機会が少ない場所です。

歯磨きなどのときに、

  • 歯ぐきにできものがある
  • 下顎が腫れている
  • 口から血が出ている

などの異変に気づいた場合には、様子を見続けずに動物病院を受診しましょう。

抱っこされるダックスフンド

まとめ

犬の下顎骨には、メラノーマや扁平上皮癌、線維肉腫、骨肉腫、歯原性腫瘍など、さまざまな腫瘍が発生する可能性があります。
下顎骨に腫瘍が広がっている場合には、腫瘍とともに下顎骨の一部を切除する手術が必要になることもあります。
下顎骨切除術は大きな手術に感じられますが、手術後も自力で食事をとり、日常生活を送れるようになる犬は少なくありません。

当院では多くの外科手術や腫瘍治療の経験があります。
腫瘍が大きくなるほど治療の選択肢が限られることもあるため、下顎や口腔内の異変に気づいたときには早めにご相談ください。

熊本県玉名市六田
あらたま動物医療センター